サーバプログラムによる多重化#
本項の内容は以下の三つから構成されます。
select関数による多重化
マルチスレッドによる多重化
マルチプロセスによる多重化
select 関数による多重化#
はじめに#
select関数による同期I/Oの多重化を利用してサーバプログラムを多重化します.
以下にEchoBackのプログラムを題材として,サーバ側プログラムのアクセプト周辺に関してサンプルコードを示します(サンプルコード内で呼び出しているechoBack関数(前回までのEchoBack通信部分のコードと大差ないので内容は未掲載)が実際に通信を行う部分になりますので,その関数を適切なタイミングで適切なソケットと共に実行することが各サンプルコードの主眼になります).
サーバ側プログラム全体は示しませんので、前回のサンプルコードを改良して複数クライアントに対応するサーバプログラムを完成させてください.
サンプルコード#
あるクライアントとの間のEchoBack通信(クライアントからメッセージを受け取り,そのメッセージ(あるいはメッセージを加工したデータ)をクライアントに返送する通信)を1つの単位として処理します.
このサーバは以下の2種類の通信に適切な応答を行う必要があります.
新規のクライアントからの接続
既存のクライアントからのEchoBack要求
新規のクライアントからの接続を待つ間に,既存のクライアントからのEchoBack要求が届くこともありますし,既存のクライアントからのEchoBack要求を待つ間に新規のクライアントからの接続要求や,別のクライアントからのEchoBack要求が届くこともあります. 従って,特定の通信を期待した読み込み待ちでプログラムをブロックすると他の通信に対応できないことになります.
select関数はOSのシステムコールを活用することで複数のソケットを監視し,任意のソケットが読み込み可能な状態となった時点でその情報を返します. その後,読み込み可能状態になったソケットのみを対象としてブロッキングI/O関数を利用した受信待ちを行ったとしても実質的に待ちなしでデータを受信することができます(読み込み待ちを行った時点で既に読み込み可能状態になっているため).
以下のサンプルコードの概要としては以下の処理を行っています.
select関数に引数として与える監視するソケットの情報を生成する
サーバソケット
クライアント管理配列に登録されたソケット(既存のクライアントとの通信用ソケット)
select関数を実行してソケットを監視する
通信を行う
読み込み可能となったソケットが新規のクライアントからの接続の場合,accept 関数で新規のクライアントからの接続を受け入れ,当該クライアントとの通信用のソケットを生成する.生成したソケットをクライアント管理配列に登録する.
読み込み可能となったソケットが既存のクライアントからのEchoBack要求の場合,EchoBack通信を行う.
#define MAXCHILD 1200
void acceptLoop(int sock) {
// クライアント管理配列
int childNum = 0;
int child[MAXCHILD];
int i = 0;
for (i = 0; i < MAXCHILD; i++) {
child[i] = -1;
}
while (true) {
// select用マスクの初期化
fd_set mask;
FD_ZERO(&mask);
FD_SET(sock, &mask); // ソケットの設定
int width = sock + 1;
int i = 0;
for (i = 0; i < childNum; i++) {
if (child[i] != -1) {
FD_SET(child[i], &mask); // クライアントソケットの設定
if ( width <= child[i] ) {
width = child[i] + 1;
}
}
}
// マスクを設定
fd_set ready = mask;
// タイムアウト値のセット
struct timeval timeout;
timeout.tv_sec = 600;
timeout.tv_usec = 0;
switch (select(width, (fd_set *) &ready, NULL, NULL, &timeout)) {
case -1:
// エラー処理
perror("select");
break;
case 0:
// タイムアウト
break;
default:
// I/Oレディあり
if (FD_ISSET(sock, &ready)) {
// サーバソケットレディの場合
struct sockaddr_storage from;
socklen_t len = sizeof(from);
int acc = 0;
if ((acc = accept(sock, (struct sockaddr *) &from, &len))
== -1) {
// エラー処理
if (errno != EINTR) {
perror("accept");
}
} else {
// クライアントからの接続が行われた場合
char hbuf[NI_MAXHOST];
char sbuf[NI_MAXSERV];
getnameinfo((struct sockaddr *) &from, len, hbuf,
sizeof(hbuf), sbuf, sizeof(sbuf),
NI_NUMERICHOST | NI_NUMERICSERV);
fprintf(stderr, "accept:%s:%s\n", hbuf, sbuf);
// クライアント管理配列に登録
int pos = -1;
int i = 0;
for (i = 0; i < childNum; i++) {
if (child[i] == -1) {
pos = i;
break;
}
}
if (pos == -1) {
if (childNum >= MAXCHILD) {
// 並列数が上限に達している場合は切断する
fprintf(stderr, "child is full.\n");
close(acc);
} else {
pos = childNum;
childNum = childNum + 1;
}
}
if (pos != -1) {
child[pos] = acc;
}
}
}
// アクセプトしたソケットがレディの場合を確認する
int i = 0;
for (i = 0; i < childNum; i++) {
if (child[i] != -1 && FD_ISSET(child[i], &ready)) {
// クライアントとの通信処理
// エコーバックを行う(echoBack関数は自分で作成すること)
if ( echoBack(child[i]) == false ) {
close(child[i]);
child[i] = -1;
}
}
}
}
}
}
参考#
[ネットワークプログラミング2 - 多重I/O(リンクは
\\fs.inf.in.shizuoka.ac.jp\share\class\NetworkProgramming
)にあります]
マルチスレッドによる多重化#
はじめに#
マルチスレッドを用いてサーバプログラムを多重化します.
以下にEchoBackのプログラムを題材として,サーバ側プログラムのアクセプト周辺のサンプルコードを示します(サンプルコード内で呼び出しているechoBackLoop関数(前回までのEchoBack通信部分のコードと大差ないので内容は未掲載)が実際に通信を行う部分になりますので,その関数に適切なスレッドを割り当て,適切なソケットと共に実行することが各サンプルコードの主眼になります).
サーバ側プログラム全体は示しませんので、前回のサンプルコードを改良して複数クライアントに対応するサーバプログラムを完成させてください.
以下のサンプルコードは pthread ライブラリを利用していますので,ビルド時に-pthread
オプションを指定する必要があります.
Day2で配布したMakefileを再利用する場合,ファイル内でLDFLAGS=-pthread
と記述してください.
サンプルコード#
あるクライアントとの間のEchoBack通信(クライアントからメッセージを受け取り,そのメッセージ(あるいはメッセージを加工したデータ)をクライアントに返送する通信)の繰り返しを1つのスレッドとして処理します.
このスレッドはクライアントから切断されるまで存続します.
当該クライアントとの通信が終了した場合には自身でスレッドを終了します(スレッドのリソースもスレッド自身で終了処理します).
// thread function
void* thread_func(void *arg) {
int* accP = (int*)arg;
int acc = *accP;
free(accP);
pthread_detach(pthread_self());
// echoBackLoop関数は自分で作成すること
echoBackLoop(acc);
close(acc);
pthread_exit(NULL);
}
クライアントから新規の接続があった場合に新規にスレッドを作成して,そのクライアントとの間の通信を作成したスレッドに任せます.
void acceptLoop(int sock) {
while (true) {
struct sockaddr_storage from;
socklen_t len = sizeof(from);
int acc = 0;
if ((acc = accept(sock, (struct sockaddr *) &from, &len)) == -1) {
// エラー処理
if (errno != EINTR) {
perror("accept");
}
} else {
// クライアントからの接続が行われた場合
char hbuf[NI_MAXHOST];
char sbuf[NI_MAXSERV];
getnameinfo((struct sockaddr *) &from, len, hbuf,
sizeof(hbuf), sbuf, sizeof(sbuf),
NI_NUMERICHOST | NI_NUMERICSERV);
fprintf(stderr, "accept:%s:%s\n", hbuf, sbuf);
// スレッド生成
int* param = (int*)malloc(sizeof(int));
*param = acc;
pthread_t th;
if ( pthread_create(&th, NULL, thread_func, param) != 0 ) {
perror("pthread_create");
close(acc); // 切断
}
}
}
}
参考#
[ネットワークプログラミング3 - マルチスレッド(リンクは
\\fs.inf.in.shizuoka.ac.jp\share\class\NetworkProgramming
)にあります]
マルチプロセスによる多重化#
はじめに#
マルチプロセスを用いてサーバプログラムを多重化します.
以下にEchoBackのプログラムを題材としたサーバ側プログラムのアクセプト周辺のサンプルコードを示します(サンプルコード内で呼び出しているechoBackLoop関数(前回までのEchoBack通信部分のコードと大差ないので内容は未掲載)が実際に通信を行う部分になりますので,その関数に適切なプロセスを割り当て,適切なソケットを与えて実行することが各サンプルコードの主眼になります).
サーバ側プログラム全体は示しませんので、前回のサンプルコードを改良して複数クライアントに対応するサーバプログラムを完成させてください.
サンプルコード#
あるクライアントとの間のEchoBack通信(クライアントからメッセージを受け取り,そのメッセージ(あるいはメッセージを加工したデータ)をクライアントに返送する通信)の繰り返しを個別のプロセスに担当させます. このプロセスはクライアントから切断されるまで存続します.
当該クライアントとの通信が終了した場合には自身でプロセスを終了します.
子プロセスのリソースはシグナルハンドラによって回収しますが,シグナルハンドラによる回収がうまくいかない場合には親プロセスによって回収します.
void acceptLoop(int sock) {
// 子プロセス終了時のシグナルハンドラを指定
struct sigaction sa;
sigaction(SIGCHLD, NULL, &sa);
sa.sa_handler = sigChldHandler;
sa.sa_flags = SA_NODEFER;
sigaction(SIGCHLD, &sa, NULL);
while (true) {
struct sockaddr_storage from;
socklen_t len = sizeof(from);
int acc = 0;
if ((acc = accept(sock, (struct sockaddr *) &from, &len)) == -1) {
// エラー処理
if (errno != EINTR) {
perror("accept");
}
} else {
// クライアントからの接続が行われた場合
char hbuf[NI_MAXHOST];
char sbuf[NI_MAXSERV];
getnameinfo((struct sockaddr *) &from, len, hbuf, sizeof(hbuf),
sbuf, sizeof(sbuf),
NI_NUMERICHOST | NI_NUMERICSERV);
fprintf(stderr, "accept:%s:%s\n", hbuf, sbuf);
// プロセス生成
pid_t pid = fork();
if (pid == -1) {
// エラー処理
perror("fork");
close(acc);
} else if (pid == 0) {
// 子プロセス
close(sock); // サーバソケットクローズ
echoBackLoop(acc);
close(acc); // アクセプトソケットクローズ
acc = -1;
_exit(1);
} else {
// 親プロセス
close(acc); // アクセプトソケットクローズ
acc = -1;
}
// 子プロセスの終了処理
int status = -1;
while ((pid = waitpid(-1, &status, WNOHANG)) > 0) {
// 終了した(かつSIGCHLDでキャッチできなかった)子プロセスが存在する場合
// WNOHANGを指定してあるのでノンブロッキング処理
// 各子プロセス終了時に確実に回収しなくても新規クライアント接続時に回収できれば十分なため.
printChildProcessStatus(pid, status);
}
}
}
}
// シグナルハンドラによって子プロセスのリソースを回収する
void sigChldHandler(int sig) {
// 子プロセスの終了を待つ
int status = -1;
pid_t pid = wait(&status);
// 非同期シグナルハンドラ内でfprintfを使うことは好ましくないが,
// ここではプロセスの状態表示に簡単のため使うことにする
printChildProcessStatus(pid, status);
}
void printChildProcessStatus(pid_t pid, int status) {
fprintf(stderr, "sig_chld_handler:wait:pid=%d,status=%d\n", pid, status);
fprintf(stderr, " WIFEXITED:%d,WEXITSTATUS:%d,WIFSIGNALED:%d,"
"WTERMSIG:%d,WIFSTOPPED:%d,WSTOPSIG:%d\n", WIFEXITED(status),
WEXITSTATUS(status), WIFSIGNALED(status), WTERMSIG(status),
WIFSTOPPED(status),
WSTOPSIG(status));
}
参考#
[ネットワークプログラミング4 - マルチプロセス(リンクは
\\fs.inf.in.shizuoka.ac.jp\share\class\NetworkProgramming
)にあります]